Ella Milburn
Group boasts high-level political and financial backers.
日本版スチュワードシップ・コードの次回の改訂で、投資家およびサービスプロバイダーのエンゲージメント活動報告が強化されることは確実とみられる。 コーポレートガバナンスコードの次回改訂にあたっての提言をまとめた新たな報告書において、有識者検討会は日本のコーポレートガバナンス改革を深化させる施策を求めている。 https://www.fsa.go.jp/en/refer/councils/follow-up/statements_4.pdf 現在、2014年に制定され、2017年に改訂された日本版スチュワードシップ・コードは、中長期的な企業価値の向上を目的とした投資家・企業間の対話および透明性の促進につながったと広く認識されている。 2017年のコード改訂では、署名機関投資家に対しアジェンダベースでの議決権行使記録を公表することが推奨されていた。2017年6月末時点では公表した機関投資家は僅か17だったが、今や100以上の機関が公表し始めている。 しかし、この新たな報告書はさらに、機関投資家は議決権行使の理由、議決権行使前の企業とのスチュワードシップ活動、スチュワードシップ活動の自己評価に関する報告を行うべきと提言している。 同報告書は次のように述べている:「投資先企業との対話は依然として形式主義的なものに留まり、中長期的な企業価値の向上に寄与していない」。 そして、次のように続けている:「企業にますますの開示を求める一方で、自身の開示責任遂行には積極的でない機関投資家が存在する」。 投資家と企業両方で構成される有識者検討会(スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議)がまとめた同提言は、スチュワードシップ・コードの次回改訂に向けた指針の提供を目的としたもので、次回改訂は本年初秋の招集が予定されている別の検討会で議論・策定される予定である。 日本総研における持続可能な金融スペシャリストの黒田一賢氏は次のように述べている:「明確な目的なく対話が行われているケースも存在し、投資家と企業が単に顔を合わせて話すだけで対話の証拠としてカウントしている。しかし、これでは企業の戦略および業務にほとんど影響を及ぼさない」。 ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン代表取締役にして有識者検討会メンバーである小口俊朗氏は、日本の株主総会シーズンが来ると特にパッシブ投資家は議決権行使という大きな負担に直面し、議決 に関する意思決定にあたって、企業とのディスカッションや詳細な分析よりも、ガイドラインを頼る羽目になっていると述べている。 小口氏は次のように続けている:「アセットマネジャーが議決権行使前にすべてのポートフォリオ企業と対話することは物理的に不可能だ。しかし、アセットマネジャーはたとえ負担に感じようとも、企業価値向上のためのより効果的な議決権行使の方法を考える必要がある」。 日本版スチュワードシップ・コードは英国のスチュワードシップ・コードを大いに参考にしながら策定され、英国版と同様に「コンプライ・オア・エクスプレイン」アプローチを採用している。投資家は、各自のウェブサイトで公表している基準に基づいて各種項目を開示することが期待されている。先般の提言は2018年11月に開始した、前回の改訂以降に投資家および企業がコーポレートガバナンスとスチュワードシップ・コードに対してどのように対応しているかを検討した結果に基づくものである。 有識者検討会は池尾和人氏(立正大学経済学部教授)を座長とし、メンバー18名には三瓶裕喜氏(フィデリティ投信ヘッド・オブ・エンゲージメント)、スコット・キャロン氏(いちごアセットマネジメント代表取締役社長)、岩間陽一郎氏(Norges Bank Real Estate Management/Senior Advisor)などが名を連ねている。 https://www.fsa.go.jp/en/refer/councils/follow-up/01-1.pdf 同報告にはサービスプロバイダーに関する一連の提言も含まれ、議決権行使助言会社は以下を前提とした「正確な情報に基づく」提言を行うことが求められている: 十分かつ適切な人的・組織的体制の確保 議決権行使に関する助言策定の開示プロセス 必要に応じた企業との直接的かつ積極的な対話 小口氏は次のように説明している:「日本におけるコーポレートガバナンス改革のカギは、「形式」から「実質」への深化にある。ここでの「正確な情報」とは、個々の企業に関する「本質的な情報」を意味している」。 「有識者検討会ではパッシブ投資運用が拡大するなかで多くのアセットマネジャーが議決権行使助言会社を利用していることが確認されると共に、議決権行使助言会社は株主総会における取締役選任議案など、企業の個別状況に関する「本質的な」評価を行うために必要となる十分な人的・組織的リソースを保有していないおそれがあるとの指摘があった」。 同報告は、アセットマネジャーは利用している議決権行使助言会社名および利用している理由、議決権行使助言会社が提供する助言の承認プロセス、それら助言の活用方法を説明すべきと提言している。 もう1つの重要な問題として、利益相反管理を含むアセットマネジャーのコーポレートガバナンス強化が挙げられている。 さらに、スチュワードシップ・コードに署名している企業年金基金が少数にとどまっている点も指摘されている。 同報告は次のように述べている:「コード署名者が少数に留まっている理由として、企業年金基金に期待されるスチュワードシップ活動のメリットおよび責任の周知不足が指摘されている。そのため、企業セクターやその他のステークホルダーと連携した企業年金基金のスチュワードシップ活動を支援する施策が重要となる。 集団的エンゲージメントやエンゲージメントの強化(エスカレーション)– 日本の投資家の間で依然混乱がみられる問題である – に関する言及は少なく、これらについては「有識者検討会で指摘されており、引き続き検討調整を行うものとする」とだけ記されている。 https://www.responsible-investor.com/home/article/japanese_investors_team_up_with_calpers/
ニッセイアセットマネジメント(NAM)が新たに発表した調査研究報告書によると、運用資産額が1兆2000億ユーロにのぼる世界最大の年金基金である、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESGに関する重要情報を積極的に開示し、アセットマネジャーやESG報告フレームワーク開発者に影響を与えるべきとされている。 この提言は、昨年11月にGPIF がNAMに 委託 したESG情報開示と開示活動に関する詳細研究の一部である。 同調査研究は世界の大手年金基金におけるESG情報の開示状況を分析したもので、特に「ユニバーサル」アセット・オーナー(市場の大半を保有している基金)は、より広範なインベストメント・チェーンへの影響力行使を目的としてESG情報を開示する傾向が強いとしている。 同調査研究は、運用資産額(AUM)上位30以内、または同上位300のうち公的年金基金に区分される世界の年金基金を対象としている。 同プロジェクトの中心として調査研究を行ったメンバーの1人であるニッセイアセットマネジメントの林寿和氏は、次のように述べている:「アセットマネジャーは常にアセットオーナー、特に大手の動向に注目しているため、アセットオーナーによる開示はアセットマネジャーの行動に影響を及ぼすと期待される」。 GPIFは2017年に初めて年次ESGレポートを発表したが、林氏によれば同報告が対象と想定していたのは投資先企業ではなく一般大衆だったという。 林氏によると:「同報告の内容は主に彼らのESG投資活動に関するもので、投資管理において自ら重要とみなしている具体的なESG問題に関する議論は必ずしも含まれていなかった」。GPIF は国内外でESGの積極的な支持者として知られており、数十億ユーロを3つのESG指数で運用している。 2017年、GPIFはスチュワードシップおよびESG関連活動をより重視する形で運用委託機関に関する評価基準の改訂を行い、昨年にはマーサージャパンに運用委託機関の報酬体系のレビューを委託している。 NAMの調査研究には、アセットオーナーは基準の整合性を向上させるため、ESGフレームワーク開発者とのエンゲージメントを検討すべきであるとの提言が記されている。 林氏は次のように述べている:「そもそもフレームワーク開発者および基準設定者の多くは、投資家に向けた企業情報開示の改善を目的としているため、情報開示に関してアセットオーナーの要求を無視できないだろう」。 同調査によると、GPIFが投資管理における重要なESGファクターを積極的に開示することは、どのようなESG情報を開示すべきか頭を悩ませている企業に見識を与えるものになるだろうとしている。 また、GPIFは企業とのエンゲージメントが法的に認められていないため、ESG情報の開示がエンゲージメントの代替的ツールとして活用されるべきであると提言している。 林氏が説明するところでは:「多くの企業は、ESG情報開示に関するフレームワークおよび基準が多数存在することに困惑している。我々は、アセットオーナーからの明確なメッセージは企業だけでなく投資コミュニティ全体に対する重要な指針になると考えている」。 NAMの調査研究に関する最終報告はまだ公表されていない。
先月、大手機関投資家、アセットオーナー、団体および政府機関の代表者が東京に集まり、国際会議RIアジア・ジャパン2019が開催された。 GPIF、第一生命保険、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどの影響力の大きいアセットオーナーが、ESGを投資プロセスに取り入れるための長期的計画や基本原理などを語ったと共に、ブレークアウトセッションでは、サプライチェーンにおけるESG、自然資本の価値、SDG目標14「海の豊かさを守ろう」に経済的に貢献する方法などのトピックが議論された。 気候変動やSDGsをテーマに行われたパネルディスカッションやインタビュー、基調講演では、可能なかぎり迅速な低炭素経済への移行が期待される世界で、投資家が直面しているリスクおよび機会についての検討が行われた。欧州委員会金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局長(DG FISMA)のマリオ・ナヴァ氏は、基調講演で次のように述べた:「現在から2030年までが、我々にとっての短いチャンスだ」。 SDGs(持続可能な開発目標) 二宮雅也氏 – 日本の有力業界団体である日本経済団体連合会(経団連)の企業行動・CSR委員会委員長であり、損害保険ジャパン日本興亜取締役会長を務める – は、 SDGsは革新的なテクノロジーと経済成長が、気候変動などの課題に対するソリューションと共に育つ社会、「Society 5.0」実現の柱となるものであると述べている。経団連は内部の専門委員会の活動を通じSDGsの推進を支援しており、二宮氏は次のように述べている:「SDGsは…問題解決および価値創造のための共通言語である」。 アクサ・インベストメント・マネージャーズで責任投資・グローバル統括責任者を務めるマット・クリスチャンセン氏が述べるところでは、SRI(社会的責任投資)の興隆は価値に、ESGの世界では投資価値にそれぞれ重点が置かれていたが、SDGsではサステナビリティの要点が社会的アウトカム(成果)にシフトしている。ESGの世界にSDGsが追加されたことは、データの観点からは難題だったが、アクサはデータプロバイダーを起用してデータギャップを解消する予定であると述べている。「投資家にソリューションを提供する絶好の時だ。現在は非常に多くの投資家がSDGsに対して何かをしているものだと考えているため、『SDGsについて何もしていない』ということは通用せず、後れを取ることになるだろう」。同氏はまた、 持続可能な金融イニシアティブの一つであるグリーンボンドによって、 回避された二酸化炭素排出回避量の定量化などをはじめ、社債発行者や投資家がインパクトを証明する道が開かれたと述べている。 オーストラリアのインフラ投資運用会社・IFMインベスターズで責任投資担当エグゼクティブディレクター(Executive Director Responsible Investment)を務めるクリス・ニュートン氏は、アセットオーナーはこれまで以上にSDGsに関する活動を把握したがっている。しかし、アセットオーナー間の期待には大きな差がある:「欧州および北欧諸国の投資家は達成される成果に大きな関心を寄せ、オーストラリアの投資家はパフォーマンスを促進させるものに関心を寄せ、アジアの投資家はSDGsの優先順位を尋ねてくる」。 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) TCFDと レギュレーションに関するパネルセッションにおいて、日本の金融庁で新設されたチーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーに就任した池田賢志氏は、TCFDを義務化することはないとした。「シニアマネジメントに説明し易い」という理由で同庁に義務化を求めてくる企業に関し、同氏は「そうした姿勢はもっとも歓迎されないものだ」と述べた。しかし、同庁総合政策局長の佐々木清隆が基調講演で略述しているように、同庁は日本におけるTCFDを積極的に推進している。池田氏によると「我々が重視するのは、企業が気候変動に対応し、グローバルトレンドと整合の取れた戦略を遂行することにより企業価値を向上させること」であり、 金融庁と経済産業省の協働で5月下旬に立ち上げるTCFDコンソーシアムは、気候変動への取り組みによる戦略的企業価値の向上について、投資家と企業の対話促進を目的としたものであると続けている。コンソーシアムへの参加はTCFDへの賛同が条件となり、国外の賛同団体も参加資格を有している。現在、76社に上る日本の企業および団体 – その3分の1は金融セクター – がTCFDへの賛同を公約している。 OECD事務次長の河野正道氏は、一方、アセット・オーナーズ・ディスクロージャー・プロジェクト(Asset Owners Disclosure Project)によれば、 世界のアセットオーナーの60%は気候変動に対する自身のアプローチについて有意義な報告をしていないと述べている。 北米および欧州からの登壇者は、続くパネルディスカッションで、情報開示・報告イニシアティブについて賛意を示している。気候変動開示基準委員会(CDSB)政策・渉外担当のマイケル・ジモニ氏は、TCFDに関する初年度の報告には順調な進捗がみられ、80社中30社が各自のアニュアルレポートで同イニシアティブに同意しているものの、導入についてはまだ初期段階にあり、利用可能なリソースについての認識不足が依然としてあると述べている。米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)のケイティ・シュミッツ・ユーリット氏は、TCFDに準拠した報告を試行している企業でも、気候変動リスクの財務的影響に言及していないことが多いとし、次のように述べている:「企業には『自分たちは期待に応えられるのか?』という懸念がある」。 シナリオ分析 気候変動シナリオ分析の利用法に関するパネルセッションでは、エミリー・マッザクラーティ氏– 気候データを扱うフォー・トゥエンティ・セブン(Four Twenty Seven)創設者兼CEO – は、低排出シナリオ達成は低い物理的影響に伴われ、高排出シナリオには大きな物理的影響が伴うとは考えないように投資家に対して警告している。「物事はそのように進まない」と語る同氏は、次のように述べている。「実際には、低排出・急激な移行・大きな影響というシナリオが同時に発生する可能性が高い」。 マッザクラーティ氏は、重要ながら同時に不確実な2つの要素 – 気候変動の物理的影響と、適応時の投資額 – 間の相互作用に基づく4つのシナリオを説明している。ベストケース・シナリオとして同氏は「我々は影響を受ける人や資産を最小限に食い止めることができるかもしれないが、現状まだ成し遂げられていないレベルで、適応に向けた投資およびエンゲージメントが必要となるだろう」としている。一方でワーストケース・シナリオとして、気候変動により不動産市場は「壊滅的状態」になり、「投資が行われなければ、我々は多くの価値破壊や人命喪失を目の当たりにすることになるだろう」と述べた。 ナディーン・ヴィール・ラメール氏– トランジション・パスウェイ・イニシアティブ(Transition Pathway Initiative)ディレクター – は、低炭素社会への移行に関する企業の準備度合いを評価するオンラインツールに、今年になって海運および化学という2つのセクターが追加されたと述べている。かつてスウェーデンの緩衝基金である第一国家年金基金(Första AP-fonden(AP1))で持続可能価値創造責任者(Head of Sustainable Value […]
日本の最新ESGトレンドを分かりやすく解説
A review of the Japanese market from the RI Asia Japan conference 2019.
Council of experts calls for measures to deepen governance.
Disclosure would influence asset manager behaviour.
The Foundation for a Smoke-Free World is a non-profit funded by Philip Morris International
New Democratic Party proposal would overhaul investor’s ESG stance